開催を目指す理由
開催を目指す理由は、いろいろあるけれど、これに向けて作品を作っている作家と同じように私も何かを背負うべきだと思ったから。
もともと作家と人をつなぐ場やきっかけを作り、一時的ではないファンになってもらいたいと始めた企画で、PandAの「人とアートと社会をつなぐ」という
経営理念をベースにしていて、そのためにいろいろな方法やあり方を模索していこうとした事業だった。
でも、他の多くの事業を抱えながら、常に20名以上いた登録作家と人をつなぐ方法はどうしても展覧会という形になりがちで、日程や会場を決めて参加を募るといった一方通行のイベント開催企画のようになってしまっていて、作家に向けて実施時期などの希望をヒアリングしたり、事業名を変えアプローチする対象や展開を変えようと試みたり、県外出展したり、ずっと悩み続けながらもひとり空回りが続いたまま、10年目を迎えてしまった。
その反省として、自分なりにこの10年を真摯に振り返り、そこに至った思いも含め心情のすべてを書いた手紙を、現在登録の作家のみなさんに送った。これまで、アンケートのようなヒアリングのやりとりはあったけれど、私の苦しい胸の内や模索している様子などは吐露したことはなかった。手紙を受け取ったみなさんはどう思ったのだろうと、今でも気になる。いずれにしても、その手紙の中で、みなさんひとりひとりと向き合いながら、それぞれが今やりたいことをやるということを10周年企画としてやりたいと伝えた。それまでも、いつでもご意見やアイデアをお寄せくださいね、と言っていて、ほとんど反応はなかったけれど、続々とこれがやりたいです!と意思表示してきてくれたのだった。双方向になったやりとり。それだけで、実は、私はとてもうれしかった。
そして、希望提案された7つの企画すべてが無事、結実しようとしていて、その最後の企画が蔵出し展ファイナルなのだ。
私がこの10年で、してこなければならなかった事をこの1年に圧縮してやってきていて、それは10年で地道にやってくれば、もっともっといい結果や違う展開・広がりになったであろうことへの罪滅ぼし的にやることにした部分もないわけではなかったけれど、実際に、それぞれの企画を作り始めると、時間も手間もかかることばかりで、修行のように感じる事も、遠くを見つめてしまうこともあった。でもひたすらすべてに向き合う事をやめなかった。いつしか、そのリズムや時間が楽しくなり、充実感となり、時間の使い方やより良いモノや企画を作り上げていくには必要なコトであり、とても大切であることを改めて実感したとても有意義な日々だったと、今、振り返る。お互い真剣な分、時にはすれ違いや意見のぶつかり合いなどもありながらも向き合う事をやめずにいたら、そのすべても解決しつつあって、それも含めて豊かな時間であったと心からそう思う。この10年、もっともっと作家と楽しんでこれたはずなんだなぁと私の勘違いの空回りを実感し、戻せない貴重な時間を悔んだ。
だからこそ、10年にしてやっと行き着いた作家と作り上げる時間と場である7つの企画すべてを実施するために、私は重い責任を負ってでも蔵出し展ファイナルを開催しなければならないと思っているのだと思う。
事業終了を延ばすという事は、会場のドルフィンポート同様、私の中では全く考えになく、それほど真剣に悩み考え続けた10年で、背水の陣的に臨んだ10周年事業。予期せぬ抵抗できない自然の力という圧力に2か月近くも晒されるという最後の最後に強烈な精神的疲弊が待っていたP≠SHOP。まさに作家という仕事を生業とする人たちの人生の大変さと重なってしまうのだ。
早川由美子